前年度までに我々はヒト外尿道括約筋を分離培養後SV40 T抗原を遺伝子導入して長寿化し、これらの長寿化外尿道括約筋細胞を用いてmyostatinが外尿道括約筋衛星細胞の増殖をTGF-βsuperfamilyであるsmad-2を介して濃度依存的に抑制し、またmyostatinの競合的阻害蛋白であるfollistatin投与により外尿道括約筋衛星細胞の増殖が促進されることを明らかにした。今回我々は1.外尿道括約筋衛星細胞におけるMyostatinの増殖抑制効果の細胞周期レベルでの検討、2.Myostatinが筋分化に及ぼす影響について検討した。 1.Myostatin投与により外尿道括約筋衛星細胞はcdk-2の発現が低下しp21の発現増加が認められた。一方フローサイトメトリーによる細胞周期解析では、Myostatinの濃度依存的にsub G1分画の増加とG2/Mの減少傾向を認め、follistatinの前処理によりsub G1分画の増加は抑制された。つまり外尿道括約筋衛星細胞のMyostatinの増殖抑制効果はアポトーシス誘導によるものではなく細胞周期停止によるものであると思われた。また、この増殖抑制効果Myostatinの阻害因子であるFollistatinにより抑制された。 2.外尿道括約筋衛星細胞に温度感受性SV40T抗原を遺伝子導入し、33℃で培養し増殖させた後に39℃に培養環境を変化させるとSV40T抗原が失活するために.これを筋分化誘導培地に変更後にMyostatinを濃度依存的に添加し、ミオシン重鎖の発現をリアルタイムRT-PCR法にて検討した.この結果Myostatinは濃度依存的にミオシン重鎖mRNAの発現を抑制した。しかしMyostatinの阻害剤であるFollistatinによる筋分化抑制は確認できなかった。外尿道括約筋衛星細胞の明確なオートクリン作用は確認されていないがMyostatinの増殖阻害効果は腹圧性尿失禁に対する新たな治療として有効な可能性がある。
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