研究概要 |
下部尿路症状動物モデルとして、雄性ラットの尿道に部分閉塞させた下部尿路通過障害モデルを作成した。偽手術モデルを対照群として閉塞群と二群間で変化を測定した。測定は両群とも手術後4,8,16週後に測定した。閉塞群では、膀胱重量の増加、残尿量の増加、排尿効率の減少が認められ、下部尿路症状が出現していることが4,8,16週全ての評価期間が認められた。対照群では、排尿症状には変化が無く、対照群として矛盾しない状態であることが確認された。勃起機能についての評価では、神経刺激による海綿体内圧の測定で行った。4,8週後の評価では両群とも勃起能に変化が無かった。しかし、16週後の評価では閉塞群が対照群に比較して有意に低下しており勃起能の低下が認められた。以上により、下部尿路閉塞モデルにより勃起能が低下することが確認され、その出現は閉塞作成後16週であった。 続いて、勃起障害が発生する原因についての探求を行った。まずは、骨盤神経節を採取して神経学的な変化が無いか検討した。骨盤神経節で海綿体神経の指標であるnNOS陽性神経を免疫染色にて同定し、その変化を検討した。術後4,8,16週のどの期間においても両群ともnNOS陽性神経に変化を認めず、神経障害は原因として認めなかった。。しかし、陰茎海綿体における血管内皮性一酸化窒素合成酵素(eNOS)のmRNA発現の低下が勃起障害と一致して認められた。この結果より、下部尿路通過障害に伴う勃起障害は陰茎海綿体における血管内皮の障害がかかわっている可能性が示唆された。血管内皮の障害は他の原因の勃起障害の発現にも重要な役割があり、今回も勃起障害モデルでもそれを認める結果であった。
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