近年、マイクロRNA (miRNA)と呼ばれるnon-coding RNAによる遺伝子発現制御が様々な疾患の重要な因子であると示唆されている。一方で、癌に関与するmiRNAの発現や機能についてはまだ不明な点が多い。本研究では前立腺癌の発生や進展に関与する検索と機能解析をおこなうことを目的とし、更に新たな治療標的としての可能性を探索した。特に、標的となるmiRNAについてはバイオインフォマティクスを駆使した絞り込みをおこない、幾つかの候補miRNAを同定した。それらのmiRNAの発現について前立腺癌細胞株や前立腺癌組織内での発現を定量的PCRによって確認し、前立腺癌組織において高い発現量を持つmiRNAを見出した。本年度はmiRNAの前立腺癌細胞における機能とその標的となる遺伝子群について検討をおこなった。始めに、前文腺癌細胞で高い発現量を認めたmiRNAに対するインヒビターを細胞内に導入し、その増殖能の変化について検討をおこなった。その結果、前立腺癌細胞におけるmiRNAの効果を抑制することによって、有意な細胞増殖の低下が認められた。また、データベース上から本研究で見出したmiRNAの標的遺伝子群について探索をおこなうこと同時に、miRNAインヒビターを導入した細胞よりtotal RNAを抽出後、遺伝子発現解析をおこない、標的遺伝子群についての探索をおこなった。
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