アンドロゲン依存性前立腺癌株LNCaPと既に確立しているアンドロゲン非依存性前立腺癌株LNCaP-HR、他のアンドロゲン非依存性前立腺癌株としてPC3、DU145を用いて細胞周期制御因子(サイクリンA、サイクリンD1、サイクリンE、Cdk2、Cdk4、p21、p27、p57)の発現を調べた結果、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞LNCaPで認められた細胞周期制御因子であるサイクリン依存性キナーゼインヒビターp27とp57の発現が、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞PC3、DU145、LNCaP-HRで低下していた。また、前立腺癌組織内でのp27、p57の発現は、癌部で発現は低下しており、悪性度であるGleason Scoreと相関していた、サイクリン依存性キナーゼインヒビター(p27、p57)のcDNAとネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだ発現ベクターをサブクローニング法で作製した。この発現ベクターをアンドロゲン依存性前立腺癌株LNCaP、アンドロゲン非依存性前立腺癌株LNCaP-HRに各々導入し、永久発現細胞を樹立した。 今後、樹立したLNCaPとLNCaP-HRのp27、p57の高発現細胞株の発現量を分析し、増殖能、アンドロゲン感受性を比較検討する。また、確立された永久発現細胞の増殖能を個体レベルで見るためにヌードマウスに移植し、腫瘍塊を経時的に計測する。また、p27、p57の発現を抑制するsiRNA法を用いて発現を抑制したときのアンドロゲン依存性前立腺癌細胞株LNCaPの増殖能、アンドロゲン感受性等を検討する。 以上、サイクリン依存性キナーゼインヒビターの発現を誘導、抑制させアンドロゲンの感受性、増殖能の変化を解析し、前立腺癌のホルモン耐性獲得機構のメカニズムを明らかにする。
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