末期慢性腎不全に陥った場合の主な治療は人工透析だが、医療経済の面では国の財政を圧迫し、患者の生活の質を著しく低下させる。一方でそれに変わる腎移植治療も確立された治療法ではあるものの、ドナー不足の面で透析の代替治療にはなり得ていない。そこで私たちは、すべての胚葉に分化可能な胚性幹細胞(Embryonic stem : ES細胞)に着目し、腎・尿管発生に重要な働きのPax2を遺伝子導入したES細胞から腎尿細管への分化が可能であるかを検討し、腎再生分化機構の解明と腎臓再生への応用を目指すことを目的とした。マウスより確立されたES細胞の一つであるMGZRTcH2を用いた。培養したES細胞と導入する遺伝子を用意し、electropolation用キュベット内に混ぜ入れて、960μF、250mVの条件でelectropolation法を行い、遺伝子を導入する。最終的にはサザンブロッティング法にて遺伝子が導入されたことを確認した。導入遺伝子自体が発現しているかどうかをRT-PCR法を用い確認するため、ES細胞からmRNAを抽出し、SuperScript II^Rキットにて逆転写反応を行い、得たcDNAを鋳型にして導入遺伝子のセンスおよびアンチセンスプライマーでPCR反応を行った。また同時に、ウエスタンブロッティング法も行いタンパクレベルでの評価をした。遺伝子導入ES細胞が導入遺伝子が発現した状態で他の尿路発生の各段階で発現してくる遺伝子に変化がないかどうかをRT-PCR法を用い確認したところ、AQP1遺伝子の増加を認め、近位尿細管が分化していることが示唆された。
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