ES細胞から腎臓への分化誘導系を確立することを最終目的に、Pax2遺伝子をES細胞に遺伝子導入をし、目的の細胞に分化する可能性のある遺伝子導入ES細胞を確立した。 1. 遺伝子導入ES細胞の確立と培養 マウスより確立されたES細胞の一つであるMGZRTcH2細胞を用いた。培養条件は5%CO2、37℃で、培養液はGlasgow MEMに10%FCS、10-4M2-メルカプトエタノール、non-essential aminoacid、1mM sodium pyruvate、1000U/ml LIFを加えたもの使用する。ES細胞を回収し、Pax2遺伝子を組み込んであるプラスミドDNAを用意し、960μF、250mVの条件でelectropolation法を行い、遺伝子を導入した。 2. 遺伝子導入ES細胞の分化実験 Pax2遺伝子導入ES細胞をLIFを除いた培養液中でhanging drop法を用いembryoid body(胚様体:EB)を形成させ、分化させた。5日後にEBを再度ディッシュに付着させ、分化を進めて、時間の経過とともに細胞を回収し、発現してくる遺伝子に変化がないかどうかをRT-PCR法を用い確認した。また細胞の形態変化なども評価した。 3. Pax2遺伝子導入ES細胞およびEBの遺伝子発現の確認 回収したPax2遺伝子導入ES細胞、細胞塊をまず導入遺伝子自体が発現しているかどうかをRT-PCR法を用い確認する。ディッシュに平面培養したES細胞を回収し、mRNAを抽出し、SuperScript IIIキットにて逆転写反応を行った。得たcDNAでPCR反応を行った。この時、遺伝子未導入ES細胞を対照とし、増幅DNAバンドの有無などで判断した。他の腎発生の各段階で発現してくる遺伝子に変化がないかどうかをRT-PCR法を用い確認し、AQP1、Integrin α8の上昇を認めた。
|