研究概要 |
本研究は新規前立腺癌マーカーSND1の機能を解析することで前立腺癌の発癌メカニズムを解明し,治療への応用を検討することを目的とする。平成21年度は昨年度に引き続き,以下の研究を行った。 1) 前立腺特異的SND1発現トランスジェニックマウスの作成 平成20年度は前立腺特異的に遺伝子を発現させるARR2PBプロモーター下流にSND1を挿入し,前立腺特異的SND1発現プラスミドベクターを作成し,それにより前立腺特異的SND1発現トランスジェニックマウスを作成した。トランスジェニックマウスは計3系統作製され,慈恵医大動物実験施設内で継代し,前立腺癌の発癌を検討した。それぞれの系統で前立腺におけるSND1の発現を免疫染色およびreal-time PCR法で確認した。これらのマウスは現時点で生後6ヶ月経過しており,現在も観察中である。雄,雌マウス共に正常の妊妖性を有している。生後18ヶ月後,雄マウスより前立腺を摘出し,病理切片を作成,免疫染色で,前立腺間におけるSND1の発現を確認した。しかし,形態的に前立腺癌の発生は観察されなかった。マウスは現在も観察中である。またSND1発現に伴う,分子学的変化を検討するために,SND1発現トランスジェニックマウスおよび同月齢の正常雄マウスから前立腺を摘出し,RNAを抽出,マイクロアレイを施行した。計41252種類のプローブで解析を行い,正常とトランスジェニックマウスにおけるmRNAの発現変化が大きい分子をピックアップし,real time PCRを行い,その発現変化を確認した。その結果から,SND1発現に伴い,Spink5, Wfdc3, Mug1, Myh4などの発現が増大する一方,Ms4a5, Ren1, Glbll3, Gsdm1, Kiss1などの発現が低下していた。これらの分子は前立腺癌の発癌に関係がある分子と考えられた。
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