高分子量プロテオーム解析により、新規膀胱癌マーカー蛋白質としてPeriplakin(以下PPL)を発見した。PPLは細胞間接着に関与しているといわれている。細胞膜の裏打ち蛋白質と言われ、食道癌においては癌が進行するにつれて、発現が低下することが報告されている。今回、上部尿路上皮癌におけるPPLの発現につき、免疫組織化学的検討を行った。また、マーカーとして臨床的に有用であるかを尿中剥離細胞でのPPLの発現頻度を免疫染色にて検討した。組織における検討では、PPLの発現は、癌では消失し、正常の尿路上皮では発現を認めた。PPLの発現の有無と組織学的悪性度、深達度、臨床病期では明らかな関連は認めなかった。尿中移行上皮細胞でのPPL発現は、癌患者群でコントロール群と比べて低下した。ROC曲線よりPPL陽性率のcut off値を66%とすると感度74.4%、特異度69.7%であった。また、癌があるにもかかわらず細胞診が陰性であった31例中23例(74.2%)でPPL陽性率が異常値を示した。尿中移行上皮細胞でのPPL発現は、従来の尿細胞診診断と併用して同じ尿のプレパラートで免疫染色を行うことにより尿細胞診の強力な補助診断が可能となり、尿細胞診検査の正診率を飛躍的に向上させることが期待される。また、PPLが正常膀胱粘膜構造を保ち、膀胱癌の浸潤、進行や転移を抑えている可能性がある。そこでPPLの膀胱癌の浸潤、進行への関与を解析することは、癌の進展機序の解明だけではなく癌治療への応用という点からも大変意義深いと思われる。我々は、膀胱癌細胞株を用い、PPLを遺伝子導入あるいは発現抑制し、増殖抑制・浸潤抑制について今後検討する予定である。
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