低アンドロゲンレベルにおける膀胱機能の変化を平滑筋収縮関連因子の遺伝子発現の変化の面から捉え、また低アンドロゲンモデルラットに対するアンドロゲン補充の効果を明らかにすることを目的として研究を行った。Rho-kinaseが活性化されるとmyosin light chainのリン酸化レベルが上昇して、ストレスファイバーの形成や平滑筋収縮が起こると考えられる。よってアンドロゲン補充/非補充群の膀胱組織におけるRho-kinaseさらにリン酸化Rho-kinaseの蛋白発現量をウエスタンブロット法で比較検討したところ、発現量に有意差は認められなかった。さらに、膀胱収縮力や平滑筋収縮に関する因子として、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、エンドセリン、アドレノメデュリンの蛋白発現量も同法にて検討したが、その発現量に有意差は認められなかった。今回の検討で発現量に差が認められなかった原因として、膀胱組織の蛋白抽出を組織全層で行ったことが考えられた。膀胱組織は大きくは粘膜上皮層と筋層に分かれるが、各層でのそれぞれの蛋白発現パターンが異なる可能性があり詳細に検討する必要があると考えている。よって、目的とする蛋白発現の局在を免疫染色で確認し、さらに膀胱組織を粘膜上皮層と筋層に分け蛋白の発現量を比較していくことが今後の課題である。また各膀胱組織からmRNAを抽出し、real-time PCR法によりアンギオテンシンII受容体タイプ1(AT1受容体)、AII受容体タイプ2(AT2受容体)、のmRNA発現量を定量的に調べAT2受容体の発現量の変化を認めているが、膀胱組織におけるアンギオテンシンII受容体の局在も組織染色で確認することを検討している。
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