研究課題
遺伝学的全胞状奇胎は2倍体、雄核発生、p57KIP2染色陰性の特徴を有している。全胞状奇胎の約10-20%に続発症が生じるが、全胞状奇胎のどの症例が侵入奇胎になるのかを予測する方法はない。侵入奇胎は、発症時期・hCG産生能・化学療法に対する感受性・転移の好発部位などの点で、生物学的に均一な特徴を有する。また10-20%と一般の新生物に比べ高頻度で発症することから、侵入奇胎と経過順調型全胞状奇胎との間には妊娠成立時から何らかの生物学的差異があると推定している。肉眼的に胞状奇胎と診断された25症例の奇胎組織・本人リンパ球からゲノムDNAを抽出し、プロメガ社Powerplex16 systemを用いてgenotypingを行った。24例は雄核発生奇胎(21例は雄核発生1精子受精、3例は雄核発生2精子受精)であることを確認した。本年度は、昨年8例(経過順調型4例、続発症4例)に対して行ったAffymetrix社高密度SNPsアレイのデータを解析した。Genotyping Consoleソフトウェアにより続発症例と経過順調型との間でcopy number多型、LOH、遺伝子増幅などを全ゲノムレベルで比較検討した。同時に胞状奇胎例とコントロールゲノムデータ(270HapMap Reference)の比較し胞状奇胎または続発症例に特異性のあるcopy number多型、LOH、遺伝子増幅領域の検索を行った。続発症例で特異的に遺伝子増幅が見られた領域が全ゲノム中に2箇所あった。今回解析した8症例以外の胞状奇胎例(30例)に対して、これら2箇所の遺伝子増幅と続発例の関連があるかを現在検討している。
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Hum Reprod (In press)
産婦人科の実際 58
ページ: 2035-2041