(背景)私どもは、間葉系幹細胞に転写因子SF-1またはLRH-1を導入後、cAMP刺激を与えることで、卵巣性のステロイドホルモンを産生する細胞へと分化誘導することに成功している。本研究ではその分化誘導メカニズムを、クロマチン構造変換解析を通して行うことにより、その分子メカニズムの解明を試みている。 (方法・結果)SF-1標的遺伝子におけるクロマチン構造変換解析 間葉系幹細胞株UE7T13細胞へのSF-1導入により、SF-1標的遺伝子の1つであるStAR遺伝子で、どのようなクロマチン構造変換がおこるかをクロマチン免疫沈降法により解析した。その結果、StARプロモーター領域では、RNA polymerase IIとSF-1がリクルートされると共に、その領域のヒストンH3およびヒストンH2Bが減少することを見出した。このことからStARの転写活性化の際、SF-1結合領域のヌクレオソーム変換、特にヌクレオソームフリーな状態をつくりSF-1の結合を促進することが重要ではないかと考えられた。さらにプロモーター領域以外に新たなSF-1結合領域を同定し、その領域においてもプロモーター領域同様、ヌクレオソームフリーな状態であることが示唆された。さらにこの領域の転写活性化能をルシフェラーゼアッセイにより検討したところ、この領域が転写活性にも重要であることを明らかにした。 (結論) 本研究により、ヒトStAR遺伝子の新たなクロマチン構造変換を介した転写活性化メカニズムを明らかにした。
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