今年度の計画においては、まずp72遺伝子の発現を、子宮頸癌の他の組織においても確認するため、子宮頸癌16例(角化型扁平上皮癌、非角化型扁平上皮癌)において、p72遺伝子の発現量をreal-timePCRを用いて測定し正常の子宮頸部上皮20例と比較を行った。結果p72の発現量は角化型扁平上皮癌、非角化型扁平上皮癌ともに正常上皮に比べて優位な発現量の変化は見られず、マイクロアレイを用いて検出を検索とは異なる結果となった。これの原因については実験の手法や検出感度の差異が考えられ、結果の妥当性について検討を行う必要がある。 また、関連遺伝子であるp68、β-カテニンについてp72の発現を解析するため免疫染色法を用いて子宮頸癌20例、正常子宮頸部上皮20例をもとに同一切片上で比較検討を行ったところ、p72蛋白の発現には染色上正常上皮に比べ発現低下を認めたが、その発現量はp68、β-カテニンの発現と相関は明らかではなかった。 これらと並行してp72を強制発現させた場合の変化について、子宮頸癌細胞株Helaに遺伝子導入を行う実験も進めており、現在までにp72を有意に強制発現する株の作成に成功している。今後この細胞株を用いて増殖速度、浸潤に関する解析を非強制発現株と比較しつつ行っていく予定である。 以上の実験について今年度は発表されなかったが、21年度中に産婦人科学会及び雑誌上で報告できる準備を現在進めている。
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