子宮体癌や乳癌などのホルモン依存性癌において、p14ARF/MDM2/p53/p21シグナロソームを構成する遺伝子のゲノム多様性が癌発生にいかに関与するかを解明することを目的とし、同意を得た子宮体癌患者116例とコントロール200例で解析した。今回はまずPCR-RFLP法およびDirect sequence法によるMDM2 SNP309T/G、p53 codon72Arg/Pro、ERα Pvu2 T/C・Xba1 A/G、p21 codon31 Ser/Argに存在する遺伝子多型の解析を行い、その結果を多重ロジスティック回帰分析を用いて子宮体癌との関連性をオッズ比OR、95%信頼区間CIにより検討した。その結果、子宮体癌症例のMDM2 SNP309G/G型のT/T型に対するオッズ比は統計学的に有意差を認めなかった(OR 1.71、95% CI 0.82-3.47)。また、ERα、p53、p21の多型単独では子宮体癌との関連は見られなかったが、MDM2 SNP309とp53 codon72の組み合わせは、子宮体癌オッズ比の高まりを示した(T/T : Arg/Pro Pro/Pro OR 2.07、95%CI 0.76-5.66、T/G G/G : Arg/Arg OR 2.76、95%CI 1.08-7.05)。以上よりMDM2 SNP309とp53 codon72Arg/Proの多型間には統計学的に有意な遺伝子間の相互作用を認めた(interaction p=0.026)。 またSP1阻害剤であるMithramycinのp53転写活性への影響を検討した。SNP309 T/TのHec6では、Mithramycinの添加でSP-1のMDM2プロモーターへの結合が阻害され低下しp53活性は亢進しているが、SP1の結合力が高いSNP309GアリルをもつHHUAではMDM2の発現抑制が弱いため、結果的にp53活性の上昇は起こらないことが示唆された。
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