研究概要 |
本研究の主な目的は、自己免疫疾患患者血清中のキメラ細胞由来のDNAおよびmRNA流入量を定量し、マイクロキメリズムと自己免疫疾患の関連を明らかにすることである。そのため、長崎大学医学部・歯学部附属病院の皮膚科および内科膠原病班の協力を得て、強皮症40例、強皮症以外の自己免疫疾患例22例を集積した。また長崎大学病院産婦人科において、同意の得られた習慣性流産と不育症の方の患者血清を23例集積した。 採取した血液は、採取当日に血清分離を行い、-80□のディープフリーザーで保管を行った。RNAの分離に関しては、採血直後からRNAの劣化を防ぐ安定剤を含む、PAXgene RNA採血管(Becton, Dickinson and Company)を用いて採血を行った。 集積した症例について、DNAについてDYS1遺伝子およびSRY遺伝子をターゲットとしたTaqManプローブを作成し、Roche Applied Science社のLightCycler480で定量的PCRを行った。その結果、DYS1プローブで強皮症症例の10例にのみマイクロキメリズム由来のDNAが検出された。強皮症以外の自己免疫疾患からは、マイクロキメリズム由来のcf-DNAは検出されなかった。また、得られたRNAに対しては、Y染色体上に存在するminor histocompatibility antigen(mHA)をコードするSMCY遺伝子のTaqManプローブをデザインし、定量的PCRを行った。しかし、同プローブでは増幅産物は検出されなかった。そのため、ターゲットを変更して、mHAの一つであるDBY遺伝子のプローブも作成したが、結果は同様であった。 これらの結果から強皮症にはマノクロキメリズムの強い関与が考えられたが、その他の自己免疫疾患や習慣性流産、不育症との関連は少ないと考えられた。
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