子宮頸癌患者において、SCCが腫瘍マーカーとしてよく用いられているが、腎不全の患者やアトピー性皮膚炎の患者では偽陽性を示すことがある。血漿中のHPV DNAを定量する事が子宮頸癌再発の鋭敏なマーカーとなりうるのか否かについて明確にする事を目的とした。 対象は2007年4月から2008年9月までに当院を受診し、HPV16陽性の子宮頸部異形成または子宮頸癌(扁平上皮癌)と診断された女性31名。DNA定量はSYBRGreenを用いたリアルタイムPCRで行った。子宮頸管内HPVDNAの有無はインフォームドコンセントを得た女性に対しHybrid Capture法を用いて検査した。対象のうちわけはBethesda systemのL-SILが1例、H-SILが19例、子宮頸癌Ia1期が2例、Ib1期2例、Ib2期2例、IIa期1例、IIb期4例であった。血漿中のHPV16DNAは対象の9.7%(3/31)から検出された。子宮頸癌Ib1期までの例で血漿中にHPV16DNAが検出された例はなく、Ib2期の子宮頸癌の2例中1例、IIb期の4例中2例に血漿中HPV16D甑が検出された。FIGO stagingが進むにつれて血漿中のHPV DNAコピー数は増える傾向が認められた。 血漿中のHPVDNAは、術後治療や疾患の進行による変化を受け、完治すると消失し、再発により検出されると考えられている。いままでのところ、SCCが高値の患者血漿中においてもHPV DNAが認められた例はわずか37%であり、血漿中HPV DNAの定量がSCCよりも鋭敏なマーカーとなるとは考えにくいが、術前のSCC値が陰性の子宮頸癌患者においては、血漿中のHPVDNA定量が低侵襲なマーカーとして期待できると考える。今後は子宮頸癌治療後の患者血漿をさらに検討し、再発との関連性を検討して行く。
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