今年度の研究成果としては症例数の蓄積が主で、多嚢胞性卵巣症候群のサンプル数を約120例まで収集することができた。健常コントロールについては、約50例でサンプル採取を行うことができた。各サンプルについて、IRS-1、PC-1、アディポネクチン、レジスチン遺伝子型の決定、空腹時インスリン値と血糖値測定からHOMA-IR値の決定、総テストステロン、遊離テストステロン、アンドロステンジオン、DHEASといった各種アンドロゲン値、などにつき測定を行った。健常コントロールについては、症例数の蓄積が思うようにはかどらないこともあり、同意書を取得済みの妊婦よりコントロール検体の提供をいただき、同様に上記遺伝子型の決定を行った。多嚢胞性卵巣症候群のグループと妊婦コントロールグループとの間で遺伝子型を比較したところ、IRS-1、レジスチンに関して有意差が認められ、さらにレジスチンのホモ変異型保有者では野生型保有者に比較して空腹時インスリン値、HOMA-IR値が有意に高く、またアディポネクチン値が有意に低いことが判明した。インスリン抵抗性との関連が示唆されている。 IRS-1やレジスチン遺伝子多型が、日本人における多嚢胞性卵巣症候群の疾患感受性遺伝子である可能性が示され、また遺伝子多型がインスリン抵抗性を惹起することが示唆されたことから、日本人においてもインスリン抵抗性改善薬を多嚢胞性卵巣症候群の治療に用いることの科学的な裏づけが得られたものと考えられる。
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