研究概要 |
本年度においては、多嚢胞性卵巣症候群とコントロールのそれぞれの症例を更にリクルートした。蓄積された症例の血液サンプルより、総テストステロン、遊離テストステロン、アンドロステンジオン、DHEASといった各種アンドロゲン値の測定を行った。また、空腹時インスリン値と血糖値を測定し、インスリン抵抗性の指標とされるHOMA-IR値の決定も行った。各症例において血液サンプルからDNAを抽出し、TaqMan PCR法によりIRS-1 Gly972Arg、PC-1 Lys121Arg、アディポネクチン-11377C/G、レジスチン-420C/Gの4つの一塩基多型(SNP)につき遺伝子型の決定を行った。 以上の結果をもとに、多嚢胞性卵巣症候群のグループとコントロールグループとの間で遺伝子型頻度の比較、遺伝子型と各種測定パラメーターに与える影響を検討した。 多嚢胞性卵巣症候群のグループにおいては、IRS-1 972Arg(変異型対立遺伝子)、もしくはレジスチン-420G/G(変異型ホモ接合体)遺伝子型を有する症例が有意に多いことが判明した(IRS-1:p=0.029,オッズ比3.31,レジスチン:p=0.035,オッズ比2.03)。更に、レジスチンの変異型ホモ遺伝子型症例では野生型接合体をもつ症例に比較して空腹時インスリン値、HOMA-IR値が有意に高く、またアディポネクチン値が有意に低いことが判明し、インスリン抵抗性との関連が示唆される結果であった。 以上より、IRS-1やレジスチン遺伝子多型が日本人における多嚢胞性卵巣症候群の疾患感受性遺伝子である可能性が示され、また遺伝子多型がインスリン抵抗性を惹起することが示唆されたことから、日本人においてもインスリン抵抗性改善薬を多嚢胞性卵巣症候群の治療に用いる事の科学的な裏づけが得られたものと考えられる。
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