妊娠高血圧腎症症例において、血清PP5濃度が正常例と比較し上昇する原因を追求すべく、またPP5の胎盤及び妊婦血清中における生理機能の解明をこころみるべく、研究を開始した。妊娠高血圧腎症症例及び正常例の血清ならびに胎盤検体を、患者への十分な説明ののち文書にて同意を得た上で採取した。 まず胎盤検体を用い、ウエスタンブロット及びリアルタイムRT-PCRを行った。蛋白・mRNAレベルで、妊娠高血圧腎症症例と正常例との間にPP5の発現量の差があるか検討したが、有意差は得られなかった。 また胎盤検体を用いて雷子顕微鏡での免疫染色法を行い、PP5を胎盤絨毛表面に吸着していると思われるGlypican、Svnd6canといった糖鎖の発現について、妊娠高血圧腎症症例と正常例とで比較するべく実験を行ったが、免疫染色の段階で技術的に困難であり、まだ予備実験の段階となっている。これについてはいったん中止とし、次年度以降に再度計画することとした。 替わりに血清を用いた実験に着手した。すなわち妊婦血清中PP5を、坑PP5坑体をコートしたビーズに吸着させ、吸着したPP5と結合している機能性蛋白質、特にセリンプロテアーゼやマトリックスプロテアーゼのプロファイリングを行った。その詳細からPP5の機能を推測することを目標として、現在研究を行っている。さらに妊娠高血圧腎症症例と正常例で、PP5と結合している蛋白質の質及び量に違いがあるかどうか検索を行っている。
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