研究概要 |
TGF-β superfamilyに属するactivinは、下垂体前葉からのFSH分泌を促進する因子として、卵胞液中から発見された。その機能としては、FSH分泌調節因子に加え、種々の組織において、細胞増殖・分化など多彩な作用が報告されている。子宮内膜症性嚢胞と卵巣癌(とくに明細胞腺癌)は共存することが多く、腫瘍発生の観点から両者の間には密接な関連性が指摘されている。これまでに、われわれは、ヒト卵巣明細胞腺癌手術摘出標本において、腫瘍細胞にinhibin βA subunit,activin A, activin receptor type IA, IB, IIA, IIB, Smad2, Smad3そしてSmad4の局在が認められる一方、inhibin α subunitは腫瘍細胞に局在が認められない事を報告した。この事より、inhibinではなくactivinが卵巣明細胞腺癌にautocrineに効果を発揮している可能性が示唆された。 今回、子宮内膜症の病態解明や内膜症細胞の増殖に及ぼす要因の分析を目的に、卵巣子宮内膜症性嚢胞および正常子宮内膜におけるインヒビン、アクチビン、アクチビン受容体、Smadの発現を検討した。 インヒビンαサブユニットは子宮内膜症性嚢胞および正常子宮内膜いずれにも発現はみられなかった。一方、インヒビンβAサブユニット、アクチビン受容体IA, IB, IIA, IIB、Smad2, Smad3, Smad4は、卵巣子宮内膜症性嚢胞および正常子宮内膜において、強い発現が認められた。これらより、卵巣子宮内膜症および正常子宮内膜において、アクチビンシグナル伝達経路が存在することが示され、子宮内膜症細胞の生着および増殖に関与している可能性が示唆された。
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