本研究は研究内容の性格上、大まかには検体の収集・確保と、そのDNA抽出・解析に分けられる。3年計画のうち、前半は検体の収集を行い、後半は検体の収集及びDNA解析を行っていく計画でる。研究最終年となる本年度の計画は、症例検体のさらなる確保に加えこれまで作成・蓄積したDNAサンプルを解析し、それぞれの症例ごと臨床病理学的項目と分子病理学的異常の形態との関連、また、臨床経過や術後補助療法に対する効果、再発再燃の有無との関連を検討することであった。本年度は新たに15例(平均年齢56.1歳)の検体を得た。術前化学療法を施行しているものは予め除外した。15例中13例が内膜腺癌(55.7歳)、2例が漿液性腺癌(59.0歳)であった。本研究開始から65例の検体を採取し、そのうち類内膜腺癌55例(58.0歳)を研究対象とした。そのうちの25例で個々の腺管ごとに各領域の遺伝子異常を解析することが可能であった。また代表腺管でのメチル化解析、免疫染色によるミスマッチ修復遺伝子の形質発現の評価を行った。症例ごとに分子学的異常の形態と臨床病理学的項目との関連、また術後補助療法に対する効果や臨床経過との関連を検討した。LOH、MSIの頻度はそれぞれ32%、40%であった。遺伝子異常が検出された19例中16例(84.2%)で個々の腺管間に遺伝子異常の多様性を認めた。予後不良の癌の進行もしくは再発は3例あり、LOHを(とくに5q領域に)認め、腺管間に多様性を持つという共通点が認められた。平成23年の婦人科腫瘍学会での発表、また海外雑誌への論文投稿を予定している。
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