平成20年度の研究実績は、以下の3項目である。(1)HPV genotypeと感染様式の解析 : 正常53例、軽度異形成44例、中等度異形成62例、高度異形成47例、上皮内癌例57例、上皮内腺癌2例、扁平上皮癌70例、腺癌16例、コンジローマ2例のHPV genotypeの検出とHPV16型陽性55例のHPV感染様式(局在)をinsitu hybridizationにて検出した。結果として、(1)全体を通してHPV16、52、58、31型が高頻度で検出された。(2)子宮頚部異形成や扁平上皮癌では頚部病変を有さない症例よりもHPVの感染率が高かった。(3)扁平上皮癌では子宮頚部軽度異形成や中等度異形成に比べ高危険群HPV単独感染の率が高かった。(4)リスク不明とされているHPVでは、66、70型が扁平上皮癌から、62、71、82型が子宮頚部高度異型性から検出された。(5)感染様式は、異形成ではdiffuse pattern、扁平上皮癌ではpunctate patternが高頻度であった。以上より、HPV16、52、58、31型が日本女性で多く認められ、リスク不明のHPVのいくつかは高リスク群の可能性があることが判明した。さらに、高危険群HPV単独感染とpunctate感染様式が扁平上皮癌の癌化に関与していることが示唆された。(2)慢性炎症関連因子の解析 : HPV検体採取と同時期に採取した組織検体(正常9例、軽度異形成5例、中等度)異形成16例、高度異形成19例、上皮内癌例20例、上皮内腺癌2例、扁平上皮癌28例、腺癌4例、コンジローマ2例)に対し、NF-kB、iNOS、COX-2、IL-6、IL-8の免疫染色を行った。現在、発現の局在、発現量を解析中である。(3)症例の経過観察 : 当科のマニュアルに則り、定期的にフォローアップしHPV genotypeのための検体採取を継続中である。
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