子宮頸癌の発症のほとんどにヒトパピローマウイルス(HPV)の関与が認められている。癌組細胞中ではウイルス由来のE6タンパクとE7タンパクが発現しており、これらが癌化および癌形質の維持に寄与している。E7タンパクは、癌抑制遺伝子産物のRbタンパクを始め、プロテアソームや各和種転写因子などに結合することで癌細胞の代謝に関与している。このE7タンパクと標的タンパクの相互作用に必要な領域は絞り込まれている。本研究はこれを利用し、子宮頸癌原因ウイルスの機能を阻害するペプチドを開発し、癌細胞の代謝への影響を詳細に検討することでより効果の高い治療用ペプチドによる治療法を開発することを目的とした。 最初にE7の部分ペプチドの各種発現ベクターを作成しHPV-E7とpRBのタンパク・タンパク間の相互作用を定量的に測定できる mammalian two hybirdアッセイ系を用いて、結合阻害活性を指標としてペプチドの性能を評価し為より強い結合力が期待できる cartilage oligometric matrix protein(COMP)assembly domainを融合させた自己五量体化ペプチドにおいて、阻害活性の向上が認められた。しかしHPV-E7を発現するHeLa細胞に上記候補ペプチド発現ベクターを遺伝子導入したが、細胞増殖能の有意な低下は認められなかった。そこでGFPタンパクとの融合遺伝子を作製し遺伝子導入したが全細胞で蛍光は観察されなかった。このことからペプチド非導入細胞が多いため、細胞障害性が観察されないと推測された。遺伝子導入効率を向上させる目的で非増殖性アデノウイルスを併用したが、十分な導入効率は得られなかった。これを克服するためペプチドを発現する組換えアデノウイルスベクターを作製したので、現在評価中である。来年度は合成ペプチドを用いて癌細胞障害性の評価を行う予定である。
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