研究概要 |
母体血漿中RNAを用いてhPL, hCGの遺伝子発現を定量すると、hPL遺伝子は、妊娠経過に伴い漸増し、分娩後、24時間で検出されなくなる。これらの遺伝子発現は血漿中のそれぞれの血中蛋白濃度と相関しており、母体血漿中RNAを用いて胎盤の機能的な変化がモニターできると考えられる。そこで、PIHを発症した妊婦(n=43)とコントロール妊婦(n=41)の血漿を分離し、PIH患者血中で蛋白濃度が増加することが報告されているVEGF, VEGFR1, endoglinなど8種類の遺伝子を標的に、RT-PCR法で発現量を測定した。その結果、PIH患者血漿中で上記8種類の遺伝子発現量は、全て有意に増加し(p<0.001)、その発現量は、分娩後に急減した。さらに、各発現は、収縮・拡張期血圧、蛋白尿の重症度と有意に相関した。次に、妊娠中期の臨床症状がない時期の血液を用い(n=372)、その後にPIHを発症した症例(n=62)としなかった症例で、これらの発現量を比較し、発症予知の可能性を検討した。その結果、CRHを除く7遺伝子の発現量が妊娠中期に既に有意に局値を示していた。ROCカーブを用いた発症予知の検討で、VEGFR1、次いでEndoglinが最もPIHの予知率が高く、7種類を組み合わせで予知率が更に高まり、5%の偽陽性率で、PIHの84%が予知できることが分った。 母体血漿中遺伝子を定量することで、胎盤の機能的な変化を無侵襲に評価できることを示した。癒着胎盤については、現在、検体採取を継続中であり、検体が集まった段階で、測定を開始する予定である。
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