本研究では、卵巣癌における腹膜非腫瘍組織(非病変部)及び腫瘍組織(病変部)の免疫系遺伝子の発現プロファイルを臨床病期・予後などの臨床病理学的情報と対比・解析することで、卵巣癌における腹膜播種の分子生物学的機構を解明し、さらには卵巣癌患者予後を予測可能な発現プロファイルを構築することを目的としている。 1臨床情報のデータベース化 東京慈恵会医科大学附属病院で外科的切除が施行された上皮性卵巣癌症例30例よりインフォームド・コンセントを得て非腫瘍組織及び腫瘍組織を収集した。診療録等より各種予後因子として、患者因子、腫瘍因子、治療因子などの情報及び無増悪生存期間・全生存期間などの予後情報についてデータベース化を行った。現在、症例を増やしてデータベール化継続中。 2卵巣癌及び腹膜非癌組織における免疫関連遺伝子18種のmRNA発現解析 先に採取した卵巣癌症例30例をtraining caseとして、非腫瘍組織及び腫瘍組織よりRNAを抽出した。これらの検体を対象として、Real-time RT-PCR法により18種の免疫関連遺伝子及び内在性のコントロールとしてHuman 18S ribosomal RNAの定量的発現解析を施行中である。Lawデータは2^<-ΔΔCT>法を用いて相互比較可能な値へと変換した後、解析に使用予定である。まず、非腫瘍組織及び腫瘍組織の各々においてCluster View及びTree View programsを用いてクラスタリング解析を行う。クラスタリング解析にて得られたクラスター間において、各種臨床病理情報を対比することで、各々のクラスターに特異的な臨床病理学的特徴及び遺伝子発現プロファイルを見いだすことが可能となる。
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