本研究では、卵巣癌における腹膜非腫瘍組織(非病変部)及び腫瘍組織(病変部)の免疫系遺伝子の発現プロファイルを臨床病期・予後などの臨床病理学的情報と対比・解析することで、卵巣癌における腹膜播種の分子生物学的機構を解明し、さらには卵巣癌患者予後を予測可能な発現プロファイルを構築することを目的としている。 1 臨床情報のデータベース化により現在までに50症例の卵巣癌患者のデータを集積した。 2 卵巣癌及び腹膜非癌組織における免疫関連遺伝子18種のmRNA発現解析 先に採取した卵巣癌症例の非腫瘍組織及び腫瘍組織よりRNAを抽出した。これらの検体を対象として、Real-time RT-PCR法により18種の免疫関連遺伝子及び内在性のコントロールとしてHuman 18S ribosomal RNAの定量的発現解析を施行。Lawデータは2^<-ΔΔCT>法を用いて相互比較可能な値へと変換した後、Cluster View及びTree View programsを用いてクラスタリング解析を行った。クラスタリング解析にて得られたクラスター間において、各種臨床病理情報を対比することで、各々のクラスターに特異的な臨床病理学的特徴及び遺伝子発現プロファイルを見いだすことが可能となる。現在までに、卵巣癌組織のみの解析から各々のクラスターに卵巣癌特有の組織型との相関関係を認めたほか、症例数が限定されるもののある種の免疫関連遺伝子と予後との間に有意な相関関係を認めている。今後、さらに解析を進めて行く予定である。
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