研究概要 |
本研究では、卵巣癌における免疫系遺伝子の発現プロファイルを臨床病理学的情報と対比・解析することで、腹膜播種をはじめとする卵巣癌の病態を分子生物学的に解明し、患者予後を予測可能な発現プロファイルを構築することを目的としている。上皮性卵巣癌50症例(漿液性腺癌24例、明細胞腺癌21例、類内膜腺癌4例)から採取した手術検体よりRNAを抽出し、Real-time RT-PCR法により16種の免疫関連遺伝子(IL-1α, IL-1β, IL-2, IL-4, IL-5, IL-8, IL-10, IL-12p40, IL-15, IFN-γ, TNF-α,IL-6, HLA-DRA, HLA-DPA1, CSF1)及びコントロールとして18S rRNAの定量的発現解析を行った。発現解析はReal-time RT-PCR法を用いた。Lawデータは2^<-ΔΔCT>法を用いて相互比較可能な値へと変換した後、Cluster及びTree Viewプログラムを用いてクラスタリング解析を行い臨床病理情報との関連を検討した。以上の検討より、解析対象となった12種の免疫関連遺伝子の網羅的発現解析から上皮性卵巣癌の病理組織型を特徴づける発現プロファイルを見いだした。特に明細胞腺癌ではTh2サイトカイン優位の発現パターンを呈し、そのユニークな臨床病態解明の一助と成りうる可能駐が示唆された。また、免疫関連遺伝子の発現プロファイルが漿液性腺癌における患者予後と相関することが明らかとなり、予後予測可能な発現プロファイル構築の可能性が示唆された。
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