本年度は下記の事項を重点的に行った。 (1) ヒト胎盤細胞の規格化 本年度新規に得られたヒト胎盤細胞およびこれまでに樹立した細胞(継代を重ねた株)に対して、網羅的発現遺伝子プロファイリング解析(Affimetrix社Gene Chipによる解析)ならびに抗体を用いた免疫染色、および表面抗原解析を行った。使用する抗体には、血管内皮細胞マーカーとして知られているCD31、CD54、CD144、CD106、VEGF-R2(Flk-1)、Flt-1、動脈血管内皮細胞マーカー(CXCR4、CD44)、造血幹細胞マーカー(CD34)等の各種細胞特異的マーカーを用いた。最終的には発現遺伝子解析結果と表面抗原解析結果を統合しヒト胎盤細胞の規格化を図ると同時に、継代や分化に従って変動する傾向を示す遺伝子と細胞表面抗原を明らかにした。 (2) 異種動物成分を排除した培養法・維持法の標準化(完全ヒト型培養システムの開発) ヒト胎盤細胞を細胞株樹立直後の状態に保つための維持培養に必須の要素(培養液、添加因子、培養基材)について検討を行った。ヒト間葉系幹細胞の完全ヒト型培養システムを完成させるために、ヒト胎盤細胞ならびに液性因子からなる閉鎖系培養ユニットの開発にも着手し始めた。平成21年度は新たに5検体についてヒト胎盤細胞の分離・培養を行った。その際、ヒト血清ならびにヒト液性因子のみからなる培養法の開発を試みた。 (3) ヒト胎盤細胞を用いた治療基盤の確立 ヒト胎盤細胞の血管、神経、骨、軟骨、脂肪を初めとする多分化能検定システム、および独自システムの開発ならびに情報収集を行った。昨年度に続き、ヒト胎盤細胞の多分化能検定システムについては、細胞培養系での分化誘導法の決定と血管新生能の評価、および重度免疫不全動物(NODISCID/IL-2Rγノックアウトマウス)への移植による生着、血管新生、機能発揮、組織構築能に関する検討を行った。本年度は特にヒト胎盤細胞の重度免疫不全マウスへの長期移植後の評価に重点を置いた。(772)
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