平成20年度は、12週齢と20週齢の加齢促進モデルマウス(SAM)と、その対象系統(12週齢と20週齢)を用いて、ABRにより聴力を測定するとともに、マウスの蝸牛よりtotal RNAを採取し、マイクロRNAの発現量の変化を、スライドグラス・マイクロアレイを用いて網羅的に解析した。ABRによる聴力測定の結果、20週齢のSAMマウスでは、高音部の聴力が低下しており、老人性難聴の特徴が認められた。また老人性難聴の特徴である高音部の聴力低下を認めた20週齢のSAMマウスと12週齢のSAMマウス、20週齢のSAMマウスと20週齢の対象系統マウスのマイクロRNAの発現量の比較を行った結果、いくつかのマイクロRNAの発現量が変化することを見出した。 興味深いことに、12週齢の対象系統のマウスと20週齢の対象系統のマウスの比較および12週齢の対象系統マウスと12週齢のSAMマウスの比較では、マイクロRNAの発現量は殆ど変化していなかった。従って内耳におけるマイクロRNAの発現は、12週齢のSAMマウス、12週齢および20週齢の対象系統マウスでは殆ど類似しているのに対して、20週齢のSAMマウスでだけ変化が認められることを明らかにした。近年、内耳の有毛細胞にだけ発現するマイクロRNAなどの存在が知られており、今回見出された20週齢のSAMマウスだけに認められる内耳に発現するマイクロRNAの発現量の変化は、老人性難聴の原因となっているかも知れない。
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