アッシャー症候群(USH)は、網膜色素変性症(RP)に感音難聴(HL)を合併する常染色体劣性遺伝性疾患である。USHは、臨床症状によりタイプ1からタイプ3の3つのタイプに分類され、さらに原因遺伝子がマップまたはクローニングされたものはサブタイプとして分類されている。現在までに、1B~1H、2A、2C、2D、3A、3Bの12のサブタイプが知られている。 臨床症状よりタイプ2と診断した患者を対象として、タイプ2の原因遺伝子の1つであり、欧米人患者では最も多くの変異が知られているUSH2Aの遺伝子解析を行った。平成21年度は、2人の患者において、3種の疾患原因変異を同定した。平成20年度に10人の患者において同定した14種の変異と合わせて解析を行った。 17種の変異の中で、14種は新規であり、さらに1種(c.8559-2A>G)は4人の患者に共通して同定された。このことより、本邦では欧米人とは全く異なる変異によりUSHを生じている可能性が高いこと、c.8559-2A>Gは本邦のタイプ2患者における高頻度変異である可能性が高いことが示唆されたと思われる。 欧米からの報告によると、USH2A遺伝子変異例では、難聴は進行しないことが多いとされている。しかし、疾患原因変異を同定することができた10人の中で1人の患者は、HLが急速に進行し、年齢に比較してRPによる視野狭窄も高度であり、非典型的臨床症状を示す遺伝子変異例と考えられた。本症例では、USH2A変異に加えて修飾遺伝子が臨床症状に影響していると考え、MYO7A、CDH23、USH3Aの遺伝子解析を行ったが、変異を同定することは出来なかった。しかし、USH2A遺伝子変異例の中にも非典型的症状を示す患者がいることは、遺伝子検査を臨床応用する上で留意する必要があると思われる。
|