頭頸部扁平上皮癌の治療における最大の目標は臓器温存と予後の向上である。近年、化学放射線同時併用療法や機能温存手術が導入され臓器温存率は向上して来ているが、その一方で生存率については大きな改善は見られていない。遠隔転移による死亡が原病死の多くを占めるため、生存率の改善を図るためには遠隔転移を生じる可能性が高い高危険群を同定する手法を確立し、高危険群に対して手術や化学放射線同時併用療法に追加して全身化学療法をadjuvant therapyとして施行し、遠隔転移の発生を抑制することが望まれる。遠隔転移の高危険群とは循環血液中に多くの腫瘍細胞が認められる一群であるが、頭頸部扁平上皮癌患者の循環血液中の腫瘍細胞を定量する敏度・特異度に優れた手法は確立されていない。そこで先ずその手法を確立するための実験を行った。頭頸部扁平上皮癌培養細胞を正常血液と混和して限界希釈を行い、Ficollを添加して密度勾配遠心法により単核細胞分画を抽出した。次に単核細胞分画より免疫学的手法により上皮細胞成分を抽出した。磁気ビーズに結合させた抗CD45抗体を添加して磁場処理を行うことにより白血球分画を除去し、更に、磁気ビーズに結合させたBer-EP4抗体を添加して磁場処理を行うことにより上皮細胞を精製して、細胞浮遊液を作製した。細胞浮遊液からCytospinを用いて塗抹標本を作成し、抗サイトケラチン抗体、抗SCC抗体を用いて免疫染色を行った。現在まで2種類の頭頸部扁平上皮癌培養細胞を用いて検討したが、安定した結果が得られるには至っていない。今後は更に実験条件の最適化を行う予定である。
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