研究概要 |
マウスアレルギー性鼻炎モデルを作製し、反応相におけるLPSの影響について検討した。Day0とDay7にOVA、AlumをBalb/cマウスに腹腔内投与して感作を成立させ、Day14に血清を採取してELISA法にてOVA特異的抗体価を測定した。Day21から28まで、OVAおよびLPSの点鼻を行い、マウスアレルギー性鼻炎モデルを作製した。最終点鼻直後より5分間くしゃみの回数を測定し、鼻粘膜組織を採取して組織学的検討を行なった。鼻粘膜における Th2型のサイトカインの発現について、免疫沈降‐western blot法にて検討した。その結果、くしゃみの回数は、OVA単独点鼻群と比較して、OVAとLPS点鼻群において有意な増加を認めた。鼻粘膜組織では、OVA単独点鼻群において好酸球浸潤を認めたが、OVAとLPS点鼻群では好酸球浸潤がより顕著となった。鼻粘膜のTh2型サイトカイン発現の検討では、IL-5, IL-10, IL-13いずれもOVA単独点鼻群で発現を認めたが、OVAとLPS点鼻群ではOVA単独点鼻群と比較してIL-5の発現の増強を認めた。続いて、TLR4の遺伝子変異マウスであるC3H/HeJマウスと、野生型のC3H/HeNマウスとを用いて、LPSの影響について検討しました。その結果、TLR4の遺伝子変異マウスであるC3H/HeJマウスでは、反応相におけるLPSの同時点鼻投与の影響(くしゃみの回数、好酸球浸潤、Th2型サイトカイン産生)を認めなかった。 上記の実験結果から、マウスアレルギー性鼻炎モデルにおいてはLPSが肥満細胞のTLR4を介しTh2型サイトカイン産生を誘導することにより、実効相の増悪因子として関わることが明らかとなった。臨床的に、喘息では抗原に付着するエンドトキシン量と喘息の重症度が相関することが報告されているが、アレルギー性鼻炎においてもエンドトキシンが増悪因子となる可能性が示唆される。近年、マウスにおいてはalternative splicingにより可溶型TLR4が存在することが報告された(Iwami K. et al. J.Immunol. 2001)が、効果相において可溶型TLR4を投与することによりアレルギー性炎症を抑制できる可能性が考えられ、新たな治療戦略の一つとなりうる。
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