本年度の研究では、骨髄細胞を用いた嗅球障害マウスの嗅覚機能回復を検討するため、(1)移植骨髄細胞の嗅球構成細胞への分化能の解析、(2)嗅球障害時における移植骨髄細胞の経時的変化について観察を行った。 (1) 野生型マウスにX線を照射し、GFPトランスジェニックマウス由来骨髄細胞の経静脈移植を行った。次に、薬物投与等による嗅球障害を与えた後、組織学的観察を行った。嗅球構成細胞の同定には、NeuN(神経細胞 : 核蛋白)、NF(神経細胞 : 軸索、樹状突起)、TBX21(投射細胞 : 僧帽細胞、房飾細胞)、ARX(抑制性介在神経細胞 : 傍糸球細胞、顆粒細胞)、TuJ1(幼若神経細胞)、OMP(成熟嗅神経細胞)、GFAP(グリア細胞)抗体を用い、GFP抗体との蛍光二重免疫染色を行った。その結果、NeuN、NF、TBX21、GFAP、OMPの抗体についてGFPとのダブルポジティブ細胞が確認され、骨髄細胞の嗅球構成細胞への分化能が確認された。他の抗体についてもGFP抗体との蛍光二重免疫染色を引き続き検討していく予定である。 (2) GFPマウス骨髄細胞移植を行った後、薬物投与による嗅球障害を与え、経時的変化を組織学的に観察した。その結果、嗅球でのGFP陽性細胞は、薬物投与から経時的に増加する傾向が認められた。また、GFP陽性細胞は、嗅球の外側から内側の組織に向かって経時的に増加する様子が観察された。これらのことから、嗅球障害時において、骨髄細胞は嗅球の外側組織へ優先的に取り込まれた後、内側組織に移行すると考えられた。今後も詳細に検討していく予定である。
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