研究概要 |
中耳真珠腫は発生の過程で中耳圧変化、特に中耳陰圧の影響を強く受けていることが知られている。真珠腫には先天性と後天性のものがあるが、先天性のものは比較的中耳陰圧の影響を受けていないと考えられており、もしintegrinが外圧の影響を受けているなら、両者に発現するintegrin関連分子に差がでることが予想されたが、中耳真珠腫における細胞形態変化に関する研究の次なるターゲットとしてintegrinに注目した。その結果、真珠腫ではretinoic acidの作用点としてのPPARγが高率に発現し、さらに核内レセプターであるPPARγと生物学的に外界環境との接点であるβ catenin, integrinとの"クロストーク"が明らかになった。具体的には、 1) 真珠腫に発現するintegrin及びシグナル関連蛋白発現の差異(先天性真珠腫、後天性真珠腫)を解明した。 2) 中耳粘膜培養で陰圧環境で見られるintegrinシグナル発現の変化を検討した。 3) 真珠腫におけるPPARγからintegrinへのシグナル伝達(inside-outシグナル、outside-inシグナル)の関与を明らかにした。中耳粘膜の圧調節機構の破綻が増殖機転へと直接作用し、さらに炎症などの修飾が加わり、後天性真珠腫が進展する可能性がある。 これまでの細胞骨格研究によつて得られた知見と総合することで、今後さらに真珠腫発生機序解明に尽力し、新たな治療法の開発に寄与したい。
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