研究概要 |
我々はこれまで、樹状細胞の機能調節に関与が知られ、アレルギー疾患の発症の起点になると考えられているIL-7様サイトカインのThymic stromal lymphopoietin (TSLP)に焦点を当て検討を行い,アレルギー性鼻炎(AR)患者の鼻粘膜では,正常鼻粘膜と比較して,TSLPの発現がmRNAおよび蛋白レベルで亢進しており,TSLP高発現群では低発現群と比較して上皮内にLCAおよびCD11c陽性細胞が多数認められること,炎症性サイトカインのIL-1β/TNF-αおよびTLR2リガンドのP_3CSK_4処置によりコントロール群と比較して優位に鼻粘膜上皮細胞からTSLPの産生が誘導されること,TSLP処理した培養鼻粘膜上皮細胞では,claudin-1,4,7,occludinの発現の増加に加えて、バリア機能の増加が認められることを示した.今回さらなる検討により,マウスの樹状細胞株のXS-52細胞ではTSLP処置により,転写因子であるNF-κBを介してclaudin-7蛋白の発現が増加し,AR患者のclaudin-7陽性の鼻粘膜上皮内において,CD11c陽性樹状細胞もclaudin-7を発現していることを確かめた. この研究成果は,ARにおけるTSLPの役割および鼻粘膜における上皮と樹状細胞のタイト結合の発現調節機構が分かるだけでなく,上皮バリア機能および樹状細胞の活性化を調節することにより抗原侵入を防御する予防および治療薬の効果を増加させるdrug delivery systemにつながると考えられる.
|