研究概要 |
細胞と細胞を接着させバリア機構として働くタイト結合も癌の浸潤関連因子であることか最近わかってきた。特にタイト結合の構成タンパクであるclaudinファミリーはがん細胞での発現変化が浸潤・転移様式に変化を与える。この研究の最終目標は「咽頭癌」の中で, どの亜部位の腫瘍が浸潤関連因子としてのClaudinのかかわりが強いかを明らかにすることである。そして, その部位のがん細胞へのclaudinの発現調節を行うことにより, 浸潤から転移へ移行するのを防止する戦略を構築する可能性を探ることである。さらに, 咽頭癌でのウイルスの持続感染がタイト結合の発現にどれだけ関与しているかも明らかにし, 発癌から浸潤へ向けての変化をタイト結合とウイルスとの関連から検討することを目的とする。 そこでまず咽頭癌における手術摘出組織をClaudin-1, 3, 4, 7およびZO-1, JAM, oculdinのそれぞれのタイト結合タンパクを免疫組織学的に染色し、RT-PCRを用いてメッセージの発現も検討した。特に中咽頭癌(扁桃癌)において, Claudin-1, -7に着目し, 肉眼藤見, 臨床症状, 治療効果などと比較したところ, Claudin-1, -7の発現減少と頸部リンパ節転移, 生存率と相関がみられた。扁桃癌はHPVが関与することが知られており, 免疫組織学的にHPVのうち高頻度に認められるHPV-16をin situ hybridization法を用いて検討した。HPVの感染とclaudin分子の発現との関連については, 現時点では明らかな相関は認められていない。
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