研究概要 |
可聴音が全く聞こえない最重度難聴者であっても, 超音波を語音で振幅変調すると語音が弁別できる場合がある。この現象を用いた補聴システム(骨導超音波補聴器)の開発が進められているが, いまだその知覚部位や聴取メカニズムは解明されていない。音の知覚に最も関連が深い側頭骨内を含む体内各部の音圧・応力分布が明らかになれば, 骨導超音波補聴器の実用化などに大きく寄与することができる。 研究代表者らのグループでは, これまで海綿骨・皮質骨・骨髄を伝搬する超音波の挙動や, 頭部CTモデルを用いた頭部内音場分布等について, シミュレーションおよび実測により詳細な検討をおこなってきた。また新しい概念に基づく骨粗鬆症診断装置を提案し, その実現可能性を検討してきた。 これらのために独自に海綿骨のような微細構造体中の音波伝搬シミュレーションソフトウェアを開発してきたが, この技術は側頭骨などにも適用可能であると思われる。現時点では側頭骨の実際の標本は得られていないが, 側頭骨近傍での音波の最適入射角度推定などに応用するため, 代替として海綿骨の骨梁の配向方向を変化させた場合の受波波形の変化について, シミュレーションおよび実測により検討した。 また, 長岡ら(2002)が電磁界強度解析のために開発した全身モデルを用いて音響モデルを構築した。予備的検討として, 徒歩時の負荷を想定し, 踵部からパルス性の圧力波形を印可した際の大腿骨骨端部等での音圧分布について検討をおこない, 下肢に固有の共振周波数が存在する可能性を示した。
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