研究概要 |
1.難聴は、先天性の障害の中では最も頻度が高い疾患であるが、難聴の程度が軽度から中等度である場合、高度難聴児に比し難聴の発見・診断が遅れる傾向にある。このような軽・中等度の難聴児は、これまで耳鼻科においても一般的にもあまり注目されず、研究対象とはなっていなかった。 この軽・中等度の難聴児に対し、聴覚言語・認知能力の発達の過程と、聴力および補聴との関係を調査し、適切な補聴の早期開始および長期間の継続が、言語発達に良好な影響を与えることを見いだした。その上で、新生児聴覚スクリーニングが一般的となるなかで、今後増加が見込まれる、早期に発見される中等度難聴の乳児への、適切な対処・治療方法について、考察をおこなった。 2.所属研究機関を訪れる難聴児の聴力レベル・補聴器装用開始時期・言語能力について調査を行った。特に重度の難聴児においては、人工内耳医療が適切な時期に行われると、その言語発達面のみではなく、社会的な面においても非常に有用であることを、あらためて確認した。 3.先天性難聴児の平衡生理機能について,従来の平衡機能検査法にVEMP検査を加え調査をおこなった。先天性の重度感音難聴児においては、重度の平衡機能障害を合併する割合が高いことがわかった。そのなかでも、特に先天性の盲聾児においては、先天性重度感音難聴児や先天性重度視覚障害児以上に、バランスおよび運動発達の著しい遅滞がみられることが判明した。それらの中枢性の代償作用の機能について考察を行った。
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