本研究は角膜輪部・結膜上皮における成人組織幹細胞の分化能の解明と安全な培養法、応用範囲の拡大により再生医療の実現化や成人組織幹細胞研究から得られる知見を社会へ還元することを目的としている。本研究では幹細胞の新たな特徴を約40年ぶりに発見した。基低膜上に存在する幹細胞は高い付着能をもつという発見は現在使われている培養器具や細胞操作用器具を改良しなければ幹細胞研究に使用が耐えないという事実を示している。本結果による新製品の開発も既に複数の国内メーカと協力しており、近い将来新しい発明が発表できる見込みである。またこの特徴を利用した角膜上皮幹細胞の単離法を開発した。採取した角膜上皮幹細胞の分化能を検討したところ杯細胞への分化能が判明し、単一分化性を持つ前駆細胞ではなく多分化能をもった成体幹細胞である可能性が示唆された。また無フィーダー・無血清培養法を検討したところ、特定の増殖因子で角膜上皮未分化マーカーであるCK15の発現を制御できることを見出した。単純に増殖させるだけでなく未分化マーカーを発現した上皮シートの開発が再生医療の実施に極めて重要であり、本成果は理論・方法を含め本研究事業で生み出された我が国独自の成果である。これらの成果の意義は角膜上皮再生医療に応用可能であり、再生医療の実現化に大きく前進したことである。知的財産権についても確保し、将来我が国がこの分野で先駆的な役割を果たす素地を構築でき、本研究の重要性は著しく高いと考えられる。
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