本研究の目的は、緑内障に対してより詳細な疾患理解と新評価法の確立を目指すものである。網膜電図(ERG)のPhotopic negative response (PhNR)を用いて、網膜神経節細胞の機能障害を他覚的に評価する方法を開発する。さらに三次元光干渉断層計(3D-OCT)を用いて、視神経及び黄斑部網膜の構造の変化とPhNRの関連を明らかにする。これらの手法により緑内障性障害を客観的かつ定量的に評価するシステムの開発を目指す。 1. 3D-OCTにおける画像解析 撮影法は散瞳下で、Aスキャンを1024本から4096本まで変更させながら、眼底の6mm×6mmの範囲をスキャンした。得られた3D-OCTのデータをボリュームレンダリング法により画像化した。これにより任意の断層像及び立体像を得ることができ、視神経乳頭及び黄斑部網膜の解剖学的な関連を生体内で3次元的に解析した。 2. 黄斑局所ERGによる機能と網膜構造の関係 緑内障患者30眼を対象として黄斑局所ERGのa波、b波、PhNRを測定した。またOCTを用いて網膜全層厚と網膜内層厚を測定した。a波、b波、PhNRと網膜全層厚と網膜内層厚との相関を評価すると、PhNRと網膜内層厚に有意な正の相関を認めた。この結果から黄斑局所ERGは緑内障患者の神経節細胞の機能を反映していると考えられた。神経節細胞の客観的な機能評価に有効であり、緑内障診療に対する貢献はきわめて大きい。 3. 緑内障眼の視野とPhNRの関連の検証 緑内障の視野評価として、ハンフリー視野に加えて、frequency doubling technology perimetry (FDT)やshort wavelength automated perimetry (SWAP) testingなどの神経節細胞の早期異常を検出するとされる視野検査を行い、focal ERGのPhNRとの関連を検証した。さらに、上下半分に分けた網膜の機能と構造の差異に着目し、半視野光刺激によるfocal ERGのPhNRを記録し、3D-OCTによって撮影された網膜層構造との関係を解析した。
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