網膜組織特異的ノックアウトを可能にする、Creマウス(KCl)の遺伝子の発現をCre reporter mouse (ROSA-LacZ^<f/f>)を用いて、胎生期より生後900日目まで検討を試みた。胎生期においては、前腕部に発現を認めた。生後は神経網膜で徐々に発現細胞の比率が増加し、生後75日頃に周辺部の視細胞を除く全ての神経網膜で発現を認めた。脳内では神経節細胞の軸索である視索と視交叉上核、大脳皮質の極一部の神経細胞で発現を認めた。しかし老化に伴い、網膜においても発現細胞が減少して、神経細胞以外では発現が無くなり、神経細胞でも発現量の減少を観察したため視神経や視索での観察は困難となった。ROSA-LacZ^<f/f>のreporter遺伝子発現量はROSA26遺伝子発現量に依存している。そこで、ROSA26遺伝子自体の発現をROSA-LacZ^<d/w>マウス(ROSA-LacZ^<f/w>のflox遺伝子を配偶子形成の段階で除去しているため、ROSA26遺伝子の発現を示している)を用いて検討した。老齢マウスにおいては、神経細胞以外はROSA26遺伝子はほとんど発現がないことがを確認した。網膜組織特異的脳由来神経栄養因子ノックアウトマウスと網膜組織特異的cfosノックアウトマウスの網膜神経節細胞の変化を検討した。網膜組織特異的脳由来神経栄養因子ノックアウトマウスの場合、神経節細胞数は網膜周辺部より減少した。網膜組織特異的cfosノックアウトマウスの網膜神経節細胞の減少は網膜組織特異的脳由来神経栄養因子ノックアウトより速かった。網膜組織特異的cfosノックアウトマウスの網膜神経では網膜組織特異的脳由来神経栄養因子が発現していなかった。cfosはマウス網膜において、網膜組織特異的脳由来神経栄養因子を含む他の神経保護因子の上流に存在すると考えられる。正常眼圧緑内障の予防には神経保護の転写因子の検討が必要であると考えられる。
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