研究概要 |
加齢黄斑変性症による脈絡膜新生血管の形成過程において、酸化ストレスによる病態悪化という側面が報告されている。平成20年度に我々は、生体内抗酸化物質の一つであるチオレドキシン(TRX-1)に脈絡膜新生血管抑制作用があることを報告した。(Inomata et al. Suppression of Choroidal Neovascularization by Thioredoxin-1 via interaction with complement factor H. Invest Ophthalmol Vis Sci 49, 5118-5125, 2008.)。我々はレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルを作成し、経時的に採取したサンプルの遺伝子発現変化を検討した際に酸化型LDL受容体の一つであるlectin-like oxidized low density lipoprotein type-1(LOX-1)の発現上昇がしていることを見出した。そこで今回LOX-1に着目して研究を行った。LOX-1遺伝子欠損マウスにレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルを作成した所,レーザー照射により誘導されるMCP-1などの炎症性サイトカイン、血管内皮増殖因子(VEGF)やマトリックスメタロプロテアーゼの発現が誘導されるが、LOX-1遺伝子欠損マウスでは抑制されていた。また形成される脈絡膜新生血管も抑制されていた。以上のことより脈絡膜新生血管の形成過程において、動脈硬化関与するLOX-1が関与することが証明された。以上の結果をふまえて、今後さらなる抗酸化物質や酸化型LDL受容体の脈絡膜新生血管形成抑制効果を検討すると共に、そのメカニズムの解明を行う予定である。
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