研究概要 |
移植用上皮シートの培養に使用されるフィーダー細胞には、従来は異種マウス3T3が用いられてきたが、最近は同種であるヒト細胞が使用されている。しかし3T3は高い上皮未分化維持能を持つため、この原因因子の探索を行っている。上皮が3T3細胞と接触することで上皮コロニー形成支持能が有意に上昇すること、3T3と角膜実質線維芽細胞の比較において前者がより高い上皮コロニー形成率を示すことから、前者でより高い発現を示す細胞膜タンパクを探索し、Dlk(Delta-like 1 homologue,FA1,Pref1)を同定した。DlkはDll(Delta-like)ファミリーとは異なりNotchシグナル抑制に働くが、Notchシグナルは角膜上皮と同じ重層上皮である表皮の基底層から有棘層への分化を促進する。そこで、本研究ではDlkが上皮細胞を未分化に維持するか検討した。 H21年度はDlkに対するsiRNAを再設計し、Dlk抑制により3T3の上皮コロニー形成支持能が影響されるか検討した。加えて、3T3に強く発現するDlk以外の細胞膜タンパクとしてNrn1、および既報のあるPtnに対しても同様の検討を行った。その結果、それぞれの遺伝子に対するsiRNAは3T3における標的の発現量を抑制したものの、Dlk抑制群およびNrn1抑制群と対照群の間でヒト角膜上皮細胞のコロニー形成率には有意な差は見られなかった。一方、Ptn抑制群においてはコロニー形成率が有意に低下した。これらの結果は、Ptnが上皮の増殖を促進するというFlorinら(J Cell Sci,118(9),1981-9,2005)の結果を支持する。
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