近年、成長期における周辺視野のぼやけblurの重要性がクローズアップされている。その背景には、動物実験において視覚刺激を奪われた部分で眼球のbulgeが起き近視が進行することが示され、実際の臨床においても未熟児網膜症でレーザー治療を受けた未熟児で軸性近視が進行するという現象がある。これらは視覚刺激遮断が弱視だけでなく、眼球形態の成長に大きく関与することの証拠である。一方、先天白内障で眼内レンズを挿入された児においても、軸性近視が起こる。小児白内障は手術手技の進歩から眼内レンズ挿入の適応が広がった。視覚刺激遮断により軸性近視が進行するという事実、眼内レンズを挿入された小児において軸性近視が進行する事実を合わせて考慮すれば、眼内レンズ挿入眼において周辺視野のぼやけblurが存在することが予想される。成人の眼内レンズにおいても周辺視野のぼやけが視機能に影響する可能性がある。今回、我々は眼内レンズ眼の周辺視野での高次収差を含めた光学特性を検討し、将来周辺視野を犠牲にしない眼内レンズデザインの開発をすることが本研究の目的である。 現在、眼の光学特性はHartmall Shackセンサーによる測定が主流といえるが、この機器では周辺視野における光学特性を測定することは困難であり、我々はPSFアナライザー(Topcon社製)を用いて周辺視野のPoint Spread Function(PSF)を測定することに成功した。平成20年度は正常眼、眼内レンズ挿入眼における中心、および周辺視野におけるPSFデータを取得し、眼内レンズ挿入眼においてPSFが正常眼と比較して劣ることを見出した。また、PSFデータから汎用性のある収差解析ができるようソフトを開発中である。
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