研究概要 |
これまで角膜の培養上皮シートを用いた眼表面の再生の報告では、培養上皮シートの質の向上として、移植時の角膜上皮細胞の重層化の状態や未分化細胞維持について述べることが主となっている。しかし、実際の臨床ではその生着にはniche(周りの環境)が非常に大切であり、本来の角膜輪部では角膜上皮幹細胞はメラノサイトと相互作用がある可能性がある。輪部メラノサイトの機能は未だ不明であり、培養上皮シート作成で、メラノサイトに関してはまったく考慮されていない。このため、本研究では「輪部メラノサイトが角膜上皮幹細胞のニッチとして必要である」という仮説のもと、輪部メラノサイトの機能及び角膜上皮幹細胞との相互作用、ニッチとしての役割を明らかにすることを目的とする。平成20年度は、まず、角膜輪部におけるメラノサイトの分布を調べた(1 : 20)。次に現在臨床応用されているヒト輪部培養上皮シートにどのくらいのメラノサイトが存在するのか免疫染色で確認した。また、ヒト角膜輪部からのメラノサイトおよび角膜上皮細胞の分離・培養方法の確立をした。具体的には、中央部を角膜移植に用い不要となった輸入角膜の輪部組織を、ディスパーゼとトリプシンを用いて輪部細胞を回収し、defined KSFM+FCS、メラノサイト培地で培養した。培養開始後7日目にgeneticin(100μg/ml)を2日間添加し、角膜上皮細胞を死滅させ、メラノサイトのみを選択的に分離培養した。分離培養された細胞は純粋なメラノサイトであることを、免疫染色(MART1, MITF, pancytokeratin)、RT-PCRで確認した。
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