家兎角膜に金属リングを縫着することで、角膜上皮の創傷治癒モデルが作成可能か検討した. まずリング移植3週間後において眼球組織を回収し組織の解析を行った. 免疫組織により、ケラチン3、Ki67、p63の発現を観察したところ、リング移植周辺の上皮は増殖亢進等が懸念されたが、正常上皮とほとんど変わりなく、輪部上皮から隔離出来ている事がわかった。また、組織回収直前の眼表面の観察や組織のヘマトキシリン・エオジン染色において、顕著な血管侵入等は観察されなかった. 角膜上皮の幹細胞が存在する輪部から隔離されたリング内の上皮はリング移植6ケ月後においても存在していた。これにより、角膜上にも増殖能の高い未分化な細胞(前駆細胞もしくはTA細胞)が存在し、半年以上かけて、ターンオーバーしている事が考えられた. さらに、角膜上皮基底細胞(TA細胞)の動向を観察するため、作成した角膜上皮創傷治癒モデルのリング内に4、5、6mmの上皮欠損を作成し、その上皮化能力を観察した. 上皮化は4mmで平均4回、5mmで平均0.75回、6mmで平均0.33回であり、上皮欠損の面積が増えるに伴って上皮化回数が減少する傾向が観察された. この傾向は4mmから5mmで優位に減少していたが5mmから6mmでは優位さは認められなかった. さらに実験が必要であるが、これによって、今まで不明であったTA細胞の動向を解析することが可能になったと考えられる. 今後はさらにTA細胞の予備能を検討するとともに神経栄養欠乏性角膜上皮欠損モデルとしても有用であるかどうかについても検討して行く.
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