前回は家兎角膜に金属リングを縫着することで、角膜上皮の創傷治癒モデルが作成可能であり、これによって今まで不明であったTA細胞の動向を解析することが可能になったと考えられる.今回はさらにTA細胞の予備能を検討するとともに神経栄養欠乏性角膜上皮欠損モデルとしても有用であるかどうかについても検討した.まず、TA細胞の予備能を検討するため、移植したリング内の上皮のコロニー形成能(CFE)について移植直後、1週間後、5週間後と経時的に観察した。また、リングを移植することによる神経への影響を観察するため、移植後の角膜知覚を測定した。さらに、リング内における神経の分布を観察するため、beta III-Tubulinの免疫染色を行った。移植直後においてリング内の角膜上皮は約25%のCFEを示したのに対し、1週間後においては約8%にまで減少したが、その後5週間後においても約8%のCFEを維持していた。一方、金属リングを移植した角膜の知覚は正常角膜の約1/9である0.6cmにまで減少していた。また、beta III-Tubulinにおける免疫染色では角膜輪部から金属リング移植部分までは正常の角膜と同様に陽性像が観察されたが、リング内においてはほとんど陽性像を観察することが出来なかった。以上のことから、金属リングを移植したリング内の上皮には5週間以上わたり、増殖可能な細胞が存在していることが示唆された。これは金属リングを移植して隔離されたリング内の上皮が約半年間維持されていたことをさらに裏付ける結果であると考えられる。また、角膜の神経は金属リングを移植することにより遮断され、消失したことから、神経栄養性角膜上皮欠損モデルとしても有用であることが示唆された。
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