研究成果 : 平成20年度研究では、(1)角膜上皮における細胞外ドメインシェディング(以下シェディング)については、SV40導入不死化培養角膜上皮細胞または培養結膜上皮細胞において、TACE(TNF-αconverting enzymeまたはADAM17)促進剤(phorbol myristate acetate、peptidoglycan)やTACE阻害剤(TIMP-3、TAPI-1)を用いてTNFレセプター1(TNFR1)のTACE依存性シェディングを証明し、現在海外雑誌に投稿中である。(2)角膜潰瘍におけるシェディング(上皮・実質相互作用の面から)については、培養角膜上皮細胞におけるTACE依存性のIL-6レセプター(IL-6R)シェディングを確認し、現在追加実験中である。ただしリコンビナントのIL-6/IL-6Rを培養線維芽細胞に投与しIL-6/IL-6Rのトランスシグナリングを検討した実験は不成功であった。(3)角膜潰瘍におけるシェディング(浸潤細胞・実質細胞の面から)については、マウス角膜アルカリ外傷を免疫組織化学的に検討し、アルカリ外傷早期以降に角膜実質中にTACEとTNFR1が発現し、それらを発現しているのが実質中に存在する線維芽細胞と実質に浸潤してくるマクロファージであること、培養線維芽細胞/マクロファージからTACE依存性にTNFR1がシェディングされることをin vitroで証明した(Sakimoto T et al. Jpn J Ophthalm1 2008)。また、角膜移植に用いたあとのドナー角膜から線維芽細胞の初代培養を確立することに成功した。また、円錐角膜という角膜実質が菲薄化する疾患など、臨床検体におけるADAM発現についても予備的に検討している。 意義と重要性 : TACEに代表されるADAMファミリー(メタロプロテアーゼファミリーの1種)が、角膜においてシェディングを行っていることを検討した報告はこれまでにはなく、角膜における炎症機転においてシェディングが亢進していることを証明した6今後、角膜を舞台にした生体防御や炎症制御におけるシェディングの重要性をさらに検討する予定である。
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