研究の成果:平成22年度研究では、(1)角膜上皮における細胞外ドメインシェディングについては、SV40導入不死化培養角膜上皮細胞において、TACE(TNF-α converting enzyme、 ADAM17)特異的なsiRNA(RNA干渉)によってTNFレセプター1(TNFR1)の細胞外への放出が減少することを証明し、平成21年度研究までの結果とあわせ、TNFR1の細胞外ドメインシェディングがTACE依存性であることを確認した。(2)培養角膜線維芽(実質)細胞においては、IL-6レセプター(IL-6R)の細胞外ドメインシェディングは起こらないことを確認した。平成21年度研究までの結果をふまえ、角膜実質では、角膜上皮から産生された可溶性のIL-6RとIL-6の複合体(IL-6トランスシグナリング)の標的となり、IL-6トランスシグナリングの炎症性シグナルを伝達している可能性が考えられた。(印刷中、Jpn J Ophthalmol)(3)マウスのアルカリ角膜外傷モデルを作製し、角膜実質中においてIL-6トランスシグナリング特異的な細胞内シグナル伝達物質であるSTAT3のリン酸化が生じることを証明した。 意義と重要性:角膜における細胞外ドメインシェディングは、角膜上皮において主に行われ、TACEなどのメタロプロテアーゼがキープレイヤーとなり可溶性TNFR1や可溶性IL-6Rなどを産生することが明らかとなった。角膜の創傷治癒や角膜炎症における角膜上皮-実質相互作用において、細胞外ドメインシェディングが重要な役割を果たしていることが明らかとなりつつある。
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