国内外で最も広く行われている緑内障手術である線維柱帯切除術は、房水のバイパスを作成し、眼外で結膜及び結膜下組織による濾過胞を形成させる濾過手術である。術後に適切な濾過胞を維持することがより良好な手術結果を得るためには大変重要であり、結膜及び結膜下テノン嚢組織における瘢痕形成を抑制する必要がある。現在、線維芽細胞増殖抑制剤を術中に使用し、術後の細胞増殖を抑制する術式が主流であるが、結膜が完全な虚血になるため、術後眼内炎のリスク等の問題がある。より安全な形で、結膜下のテノン嚢の瘢痕形成を抑制する方法が必要であると考えられる。本研究では、従来の増殖抑制による瘢痕抑制ではなく、テノン嚢線維芽細胞の細胞動態を制御している分子機構・生理的因子を検討し、シグナル伝達に関わる化合物を用いて、テノン嚢の創癒機転の解明やより安全な瘢痕形成の抑制方法を模索している。本年度はいくつかの化合物について、in vitroでの細胞動態制御について検討し、今後実験的手術モデルなどで、実際の瘢痕抑制効果を検討したいと考えている。
|