胆道閉鎖症では病変は肝外胆管のみにとどまらず、肝内胆管にも及んでおり、このことが本症の病因及び病態に重要な意味を持っている。葛西手術後に黄疸消失しても肝内病変が進行し、肝移植を必要とする症例が認められる。すなわち本症の長期予後を改善するためには肝内胆管病変の病態解明が急務である。本研究は本症の病態に類似したマウスモデルを用いて、laser capture microdissectionによる肝内胆管の組織採取を行い、cDNA microarrayによりその肝内胆管組織におけるmRNAの発現の状態を評価し、本症の病因および病態進展に関連する因子を同定することが目的である。本年度は動物モデルの状態の確認を行うことを主眼とした。当初はマウスの腹腔内にロタウイルスの投与を行うことにより得られる肝外胆管閉塞モデル、invマウス、胆管結紮モデルおよびコントロールマウスの作成を考えていた。ただし、実際にはウイルス投与モデルの作成は困難であることが判明したので、結紮モデルとコントロールマウスの状態を把握している状態である。ただこれでは当初の目標より大きくずれるので、現在ではウイルス投与モデルに代わってdouble strand RNAウイルスの人工mimicである、polyI : Cの腹腔内投与モデルの確立を目指している。 上記のモデルマウスの作成状態の変更により、cDNA microarrayは準備段階を脱していないが、使用するmicroarrayを当初のフィッシャー社より検出感度が良く、再現性の確実である東レ製3D-geneへと変更することを決定した。これを使用した予備実験を進行中である。モデルマウスの条件が決定したら、速やかにmicroarrayを使用した実験を行える状態である。 さらに本研究は、上に記したように、胆道閉鎖症の長期予後を規定する因子を同定することが最終目的であるため、実際の胆道閉鎖症の病状をより深く把握する作業は必須である。よって、その作業の結果をまとめて、これを学会、研究会などで報告した。
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